主食:舞台

フリーライターが語る舞台のこととか、散文とか。

TRUMPシリーズを履修してからEqualを見たら印象が変わったという話

脚本・演出家などで活躍している末満健一さんがライフワークとしている「TRUMPシリーズ」のYouTubeライブ上映企画「はじめての繭期2020」が先日15日まで行われていました。
私自身はシリーズ中の「グランギニョル」、「COCOON月の翳り星ひとつ」、「TRUMP(Dステ版)True/Reverse」を見た事があり、今回の上映企画では「マリーゴールド」が初見でした(SPECTER(初演)は都合が合わず見れませんでした)。
あと別枠(U-NEXT)で「LILIUM」も視聴しました。

一通りのTRUMPシリーズを履修し終えた後、私は無性に同じく末満健一さんが手掛けた「Equal」が見たくなり、DVDを視聴しました。

「Equal」とは

「Equal」はある青年2人の物語で、出演者は2人だけの2人芝居です。
「Equal」は初演と再演(STELLA/LUNA)が存在しますが、今回私が視聴したのは、再演版です。

舞台は、18世紀末期、ヨーロッパのとある田舎町。
そこに『二コラ』と『テオ』という青年がひとつ屋根の下、暮らしていました。
二コラは重い肺病を患っており、表に出る事もままならず、彼の世話は主治医であり幼馴染みのテオが請け負っていました。
二コラに死期が迫っている事は明らかで、医師として限界を感じていたテオはある日、『錬金術』を研究している事を二コラに告げます。
しかも、その目的は『不老不死』を実現させるというもの。
しかし、近くの街ではその頃『異端者狩り』が横行しており、「そんな研究をして異端者に間違われたらどうする」と二コラはテオを罵倒しますが、その日から、何故か二コラは不可解な行動をする様になります。
二コラとテオ、『2人の青年』が過ごした7日間の物語。

TRUMPシリーズとEqualに存在する2つのキーワード

予め申し上げておきますが、これより「TRUMPシリーズ」、「Equal」の核心部分まで記載がありますので、ご了承ください。

TRUMPシリーズとEqual、どちらにも『不老不死』、「君は僕であり、僕は君である」というキーワードが存在します。

TRUMPシリーズにおける『不老不死』は、永遠の命を持つTRUMP(クラウス)であったり、クラウスに噛まれたソフィー(ファルス)、ファルスの薬によって不老不死にされたリリー、ウル・デリコが死の恐怖から逃れる為に渇望するなど多岐に及んで物語に使用されています。
そして、ウル・デリコやゲルハルトは全くの他者である相手に依存、あるいは強い思いを抱いて「君は僕であり、僕は君である」という押し付けをします。

Equalにおける『不老不死』は、肉体は滅びても『自身の精神』を別の肉体に移す事によって『疑似的な不老不死』を実現させるというテオの願望として使用されています。
また、テオは『自分』を複製している為、「君は僕であり、僕は君である」は言葉通りの意味になっています。

当然の事ながら、TRUMPシリーズとEqualという作品に関連性は全くないのですが、TRUMPシリーズを見てからだと、世界観をより理解しやすくなった印象があります。

物語の理解度が上がった

私がEqualを初めて見たのは、TRUMPシリーズ履修前でした。
その為、その時は出演されていた役者さんの演技力の高さであったり、舞台であるからこそ生まれる混乱(場面毎に二コラとテオを交互に入れ替えて演じていた)などに目がいきました。

しかし、TRUMPシリーズを履修した上で再視聴すると、初見時は難解に感じた部分が頭にスッと入ってきました。
例えば、最初は役者さん(AとBとします)が違う事によってA二コラとAテオ、B二コラとBテオとそれぞれ別の二コラとテオが存在している様に感じていたのですが、実はAもBもなく、あくまでも、場面毎に演じている役者さんが違うだけ。
TRUMPのTrue/Reverse(ウル⇔ソフィー、クラウス⇔アレンの様な対になる役を公演毎に交互に演じる)システムが舞台上で行われているだけなのではないかと考えると一気に分かりやすくなりました。

「はじめての繭期2020」でTRUMPシリーズに興味を持ち、それ以外の末満さんの作品を見てみたいという方にはおすすめの作品です。
2020年7月17日現在、公式オンラインショップに「Equal」の在庫がない様ですが、私も再販で買う事が出来た口なので、いつかまた再販があるかもしれません。
どちらも既に見た事があるけど、という方も是非一度見直してみてください。
きっと新しい発見があるはずです。