主食:舞台

フリーライターが語る舞台のこととか、散文とか。

拝啓10代の私へ 10年後のあなたはアイドルにハマってるよ

私は舞台オタクである。観劇年数は10年を超え、ミュージカルなどあらゆる作品を観てきた。しかし、ここ数年である変化が訪れた。“アイドルにハマった”のだ。

それもわりと怒涛の勢いで、現在は6つのグループを追いかけている状況だ。この今の状況を10代のころの私に話したらきっと驚かれることだろう。

私はアイドルとは無縁の生活を送ってきたのだ。

青春はお笑いと共に過ごした

1999年に『嵐』がデビューし、浜崎あゆみさんや安室奈美恵さんなどいわゆる“平成の歌姫”たちが全盛期のころ、私は10代の多感な時期を過ごしていた。

 

まわりの同級生はきっと『嵐』を好きになっていただろうし、そうでなくともほかのアイドルなどが好きだったんだろうと思う。しかし、私はアイドルに見向きもせず、お笑い芸人にハマっていた。それも、神奈川県在住でおよそ近場で見ることのできない、関西のお笑い芸人にハマっていた。

 

現在、テレビで大活躍している『千鳥』や『麒麟』などがまだ若手芸人と呼ばれていたころ、私はお笑いに夢中だった。

何度目かのお笑いブームが来ていたこともあり、ネタ番組も多く、雑誌も大量に発行されていた。同級生たちが『Myojo』でアイドルのグラビアに喜んでいる中、私は当時のお笑い雑誌の中でも人気な『お笑いポポロ』のインタビューやグラビアを楽しみにしていた。

 

初めて大阪に家族旅行に行ったときも、家族に頼んで今はなき『うめだ花月』に連れて行ってもらい、当時はコア中のコア芸人だったくっきー!さんが所属するお笑いコンビの『野性爆弾』を見た。それくらいお笑いに夢中だった。

きっかけは“俳優”として出会ったあのアイドル

大学生になると、観劇にのめり込むようになるきっかけのTEAM NACSに出会い、お笑いとは疎遠になった。しかし、それと並行してテレビで“俳優”として見たある人をきっかけに、少しずつアイドルが気になり始める。

 

それは、『関ジャニ∞』の横山裕さんだ。私が見た作品は『ザ・クイズショウ』というテレビドラマ。櫻井翔さん演じる過去の記憶を失った青年と、横山さん演じるその過去を知るテレビディレクターの青年が、“ザ・クイズショウ”というクイズ番組を利用して過去をひも解いていくというもの。

 

実は、10代のころに『フードファイター』で拝見して以来、横山さんの演技がとても記憶に残っていた。そんな訳でこのドラマを見た私は、案の定横山さんにノックアウトされた。

そして、その後にとった行動は何か。

生まれて初めて、アイドル雑誌を購入した。

多くのアイドルファンたちが10代に通過してきているであろうことを、私は20代になってから初めて経験した。アイドル雑誌の独特な紙質、鬼のように毎月・毎週表紙を飾るテレビ誌、映画誌、ファッション誌。それら全部についていくことはできなかったけれど、少なくともあの頃は“アイドル”にハマっているという自覚があった。

 

そして、2017年。私は今までの人生でもっとも推すことになる“アイドル”に出会う。

“名古屋の町おこしお兄さん”に衝突した

きっかけは、友人のツイートだった。その友人が『BOYSANDMEN』(以下ボイメン)という男性グループを推しており、以前から名前は聞いていた。

 

『帆を上げろ』というシングルが発売された時のこと。「そんなに推してるなら、とりあえず聞いてみるか」とCDを買い、MVを見た時、気がついたらあるメンバーから目が離せなくなっていた。友人に「やたらかわいい笑顔の人がいるが、あれは誰か」と話すと、メンバーカラーを聞かれたので、友人にその色を伝えると、それが田中俊介さんという人だとわかった。

(注:ボイメンは、アイドルを自称していないが、便宜上“アイドル”と記載することをご容赦いただきたい)

それからというもの、私は田中さんについていろいろな情報を集めだした。筋肉担当の兄貴分で、でもえくぼがあってかわいくて、笑顔がニャンちゅうに似ているといわれていて……。あっという間に夢中になってしまった。

 

ボイメンは、CD発売時にいわゆる“握手会”のようなものをやっていた。ある時は、埼玉県越谷市にある『イオンレイクタウン』、またある時は、千葉県市川市にある商業施設、とあらゆる地域でイベントを開催していた。

私ももちろん参加していたが、いずれも神奈川県の自宅から若干距離がある。しかし、「早めに行かないと券がなくなってしまうかもしれない」と毎回、休日にも関わらず5時起きで参加していた。

 

そして私はライブを見るため、2018年2月に初めて名古屋への遠征をすることになった。本格的にアイドルのライブに参加するのが初めてだった私は、そこで衝撃を受けた。

まず、メンバーカラーに光り輝く客席がきれいで感動したのだ。それまで他のライブに参加したことはあったが、ペンライトがあっても単色が多かったため、非常にカラフルに感じた。

そして、“声出し”というのもボイメンのライブで初めて経験した。特にアイドルのライブに多い、メンバーの名前を叫んだり、いわゆる“コール”という掛け声をするものだ。私も精一杯の愛情をこめて叫び、それが非常に楽しかったのだ。

 

そして私は、その後も何度もライブに足を運び、ある時は彼らの後輩のライブに足を運ぶなど楽しく過ごしていた。

多分、またあの場所にいきたいんだと思う

私にアイドルを追いかけることの楽しさと、ライブの楽しさを教えてくれた田中さんは、現在ボイメンを卒業し、俳優として活動している。そして私もそのままフェードアウトするように、アイドルを追いかけなくなってしまった。

 

しかし時折、あのカラフルにペンライトが光り輝く場所に行きたくなるし、声出しをしたくなる。直接「ありがとう」を伝えたくなる。何より、元気で楽しそうな子は応援したくなる。そんな気持ちが爆発したのか、30代になってからアイドルに対しての興味が異様に湧いている。

 

再燃の一因に、現在は気軽にアイドルの情報が手に入りやすいというのもあると思う。

公式Twitterでメンバーの写真が見られたり、Instagramで自撮りがアップされる。グループによっては楽曲が配信されていたり、YouTubeでライブ映像が見られたりする。私のような、アイドルを追う人生を送ってこなかった初心者であっても、YouTubeSNSがあることで、手軽に知識が増やせるようになった。そして、何より早く会いたい、生で見たいという気持ちが高まりやすくなったのではないだろうか。

 

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「ファンとは何か」という論争で、いわゆる、“にわかファン”がたびたびやり玉にあげられる。しかし、使えるお金、時間は人それぞれだ。それに新しいファンがいるからこそ、ファン層がさらに広がりを見せる。そのため、「新規ファンは大切にすべし」というのが最近の論調と言われている。私も各グループのファンとして、できる範囲でアイドルたちを応援していきたい。

 

エンターテインメントの興業が、徐々に以前のように戻りつつある。2022年は、好きになったアイドルに少しでも会える年に、「ありがとう」を伝えられる年になったらいいな、と思う。